抗がん剤の副作用のひとつ、脱毛。これを防ぐことができる(かもしれない)方法のひとつに頭皮冷却法があります。どんな方法なのか、実際のところはどうなのかについて、根拠のある情報と、私個人が実際にお話をした患者さんたちのリアルについてまとめました。患者さんたちからの情報については、個人が特定されないようにお話をさせていただきます。

1 頭皮冷却ってどうやるの?

簡単に言うと、頭を冷やします。表面を安定的にキュッと冷やす機械や帽子が開発されています。大きく分けると、冷たい液体が内側を流れるキャップを使う方式と、予めフリーザーで凍らせた氷キャップをかぶる方法があります。よりしっかりと冷やすために、髪の毛を濡らして冷却キャップを使う場合もあります。

2 どうして頭を冷やすと脱毛が防げるの?

点滴で抗がん剤を使用すると、薬液が全身をめぐります。このおかげで、全身にあるかもしれない小さながん細胞もやっつけることができます。同時に、毛根や爪などにつながる血管にも抗がん剤が入り込み、そこで脱毛や爪が黒くなるなどのダメージが発生します。

この頭皮冷却では、頭の表面温度を3℃〜5℃に冷やすことで血流を悪くして、髪の毛に抗がん剤が行く量を少なくして、脱毛を防ごうという方法です。

点滴を始める前から頭を冷やし始めて、事前30分+点滴中90分の合計約120分間、頭を冷やし続けます。

3 効果はどのくらいあるの?

効果に関する研究の数字は幅があります。これは、薬の種類や実験した国によるのかもしれません。

研究結果から見てみましょう

有名なものとしては、アメリカのJAMA(米国医師会雑誌)に発表されている研究で、脱毛がよく出るアントラサイクリン系とタキサン系のお薬を使うアメリカ人女性182人に行った調査があります。キャップを使う、使わないグループを大体半分ずつに分けて実験をしたところ、冷やすキャップを使った人の50%の人は脱毛が半減した、という結果が発表されています。

もう少しまとめると、以下のような結果です。

  • 冷やすキャップを使わないと、ほぼ100%の人が髪の毛の殆どが抜ける
  • 冷やすキャップを使うと、半分の人の脱毛が少なくなった(つまり抜ける)
  • 冷やすキャップを使ったもう50%は、脱毛した
Effect of a Scalp Cooling Device on Alopecia in Women Undergoing Chemotherapy for Breast Cancer: The SCALP Randomized Clinical Trial | Oncology | JAMA | JAMA Network

This randomized clinical trial evaluates whether a scalp cooling device is effective compared with no cooling for reducing alopecia in women with breast cancer undergoing chemotherapy.


次に、私個人が今までに出会った5人の体験者さんたちの話

これは私が今までに実際に出会った、冷やすキャップを体験した患者さんたちのお話です。これは研究ではありませんし、私の会う人に偏りがあるかもしれませんので参考まで。

今まで5人の体験者さんに会いましたが、実際に使用した人で全くウィッグが不要な人はいませんでした。脱毛が少なかった方でも髪の毛の量が50%ほど減り、ウィッグと帽子を使用していました。

使用中はとにかく寒く、かき氷を食べたときのような頭がキーンと痛くなる感じ、頭痛を感じる人もいました。みなさん、少しでも髪の毛が残るならと数回の抗がん剤投与の度に使用したそうです。

結論としてウィッグや帽子が必要でしたが、みなさん「やらなかったら後悔したから、やってみてよかった」と話してくれました。この方法は保険適応外ですが、最近では実施できるクリニックや病院が増えてきました。

私の個人的な意見としては、結論として抜けてしまうかもしれないけれど、チャンスが有ってやってみたいと思う方は、チャレンジするのも良いかと思います。しかし、過剰な期待はせず、脱毛に備えて帽子を用意しておいてくださいね。帽子はとても便利ですし、突然の脱毛でも慌てなくてすみます。ウィッグは必要になったらその時に用意すれば大丈夫ですよ。

4 どこで使えますか?

治療を受ける病院でお尋ねください。頭皮冷却は2021年4月現在、保険適応外です。実費で数万円程度が多いようです。金額は提供するクリニック・病院によって異なります。

参考サイト

Cooling Cap to Reduce Chemotherapy-Related Hair Loss - NCI

An NCI Cancer Currents blog post about FDA’s clearance of the DigniCap Scalp Cooling System for use in reducing hair loss during chemotherapy by patients with any type of solid tumor.

Cooling System to Prevent Hair Loss | Hair Disorders | JAMA | JAMA Network

Women with breast cancer who dread losing their hair during chemotherapy have a new ally. The first computer-controlled scalp cooling device designed to reduce the frequency and severity of chemotherapy-induced alopecia has gained FDA approval.


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