抗がん剤終了後の髪の毛質変化 生えてくる毛の特徴と、育毛、カラー、ケア方法のあれこれ
がん患者さんの日常生活を、正しい情報とつながりでサポートするSpeak(スピーク)の事務局です。
今回は、抗がん剤が終わったあとに生えてくる髪の毛との付き合い方についてのコラムです。これから私の髪の毛はどうなるのか、看護師向けのテキストを参考に解説します。参考にした書籍は一番最後に紹介していますので、こちらもご興味がある方は読んでみてください。
1 髪質変化は、ほとんど全員が体験します。白髪も出てきます。
抗がん剤終了後に生えてくる髪の毛は、とても嬉しいものです。
脱毛する抗がん剤治療が終わり1〜2ヶ月くらいすると、ポツポツと点々のように生えてきます。この髪の毛がだんだんと伸びてくるのですが、脱毛前の髪質に戻るには1〜2年かかります。
毛質の変化は、殆どの場合細くて柔らかくて、いわゆるくせ毛になります。医療では軟毛といいます。
これは、抗がん剤の作用で毛根で髪の毛を作るケラチノサイト(髪の毛になる元の細胞)に影響があるためです。抗がん剤の影響が出るところと出ないところがあり、左右非対称なので、生えてくるときに曲がってしまい、くせ毛になります。細い髪の毛が生えてくるのは、最初の頃はケラチノサイトが弱っていて、十分な成長ができないためです。
そして、白髪も出てきます。
これは、毛根のところにあるメラノサイト(髪を黒くする細胞)が抗がん剤の影響で働きをやめてしまうために起こります。影響が弱ければ元通りになりますし、影響が強ければ白髪のままになります。個人的な実感地ですが、白髪になる量は元の白髪より少し増える程度です。すべてが真っ白になった方には、まだお会いしたことはありません。
この毛質の変化はほぼ全員が体験するものなので、生えてくるときはくせ毛と考えてよいでしょう。実際の患者さんの写真を、専門美容室ピアのInstagramアカウントから見てみましょう。
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2 しかし、時間とともに毛質は戻ります。
最初はびっくりしますが、髪が伸びてくると、くせ毛も元の髪質に戻ってきます。
正確なデータは無いのですが、体験上大体半年〜1年位です。生え始めから8ヶ月くらい経つと、長さも早い方ならショートヘアくらいになります。
こちらも専門美容室ピアのInstagramアカウントから、実際の患者さんの写真です。このようにくせ毛を活かしながらショートヘアで自毛デビューする方が多いです。
もちろん、髪の毛の長さにこだわりがある方は、伸ばしてからウィッグを外すこともできます。最近は、子どもさんがショートは嫌がるから、とショートボブくらいまで伸ばしてからウィッグを外す方もちらほら。
このあたりは、ご本人の気持ちを聞きながら、ウィッグの使い方を工夫しながら、髪が伸びてくるまでじっくり待つことが多いようです。
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3 生えてきた髪の毛のカラーリングは?タイミングを見て実施OK。
現在のアピアランスケア(見た目のケア)に関する研究によれば、
カラーリングは上手に使って見た目を整えましょう
という結論になっています。
実際には、髪の毛を安全に染められる方法は根拠がない、でもカラーについて抗がん剤患者だけの副作用もない、だから全員カラーしてはだめという理由はない、ということです。ややこしいですが、この方法ならOKという方法もないし、だめな理由もないし、様子を見ながらやりましょうということです。いつもの美容室や、いつもの薬剤で目立たないところからトライしてみるのは、いかがでしょうか。
ヘアカラーに関する注意事項と対策
- 過去にカラー剤でアレルギーを起こしたことがある方は、今回使うカラー剤のパッチテストをしてみましょう。カラー剤自体を変えたらアレルギー(痒みや腫れなどの皮膚症状)が出ない場合もあります。
- 頭皮に湿疹や傷がないこと。あるときは、そこを避けて塗る、その部分はワセリンなどで保護しておくと良いでしょう。心配でしたら、傷が治ってからカラーしましょう。
- カラーリングできる長さまで伸びていること。地肌につけないこと。これには根本につけないでカラー剤を塗ることができる長さが必要です。3〜5cmくらいは必要です。
- 心配な場合は、今回使うパッチテストで陰性であること。
- 治療前に使用していたカラー剤、カラーリンス、トリートメント、ヘアマニキュアなどを使うのも一つの手段です。
カラーリングは、健康な人でも体調が悪いときなどタイミングによっては痒くなることもあります。もしもカラーした後に痒みや湿疹ができたら、皮膚科もしくはかかりつけの医師に相談してください。
4 育毛剤は、ミノキシジルをどうぞ
薬局やドラッグストアでは、様々な種類の育毛剤、ヘアケア剤が売られています。
抗がん剤終了後の髪の毛が柔らかくて細い場合は、ミノキシジルが入っている育毛剤によってある程度の効果があるという研究結果があります。
この研究によると、ミノキシジルの外用(塗るタイプ)の併用は抗がん剤終了後の育毛に効果があることがわかります。
市販の育毛剤には、果汁や海藻などの入ったもの、スッキリするもの、植物のエッセンスのものなど、色んなものがありますが、発毛の効果について根拠ある研究は出ていないようです。
気分転換や、リラックスとしての効果は期待できますので、生えてくるのを楽しみにする気持ちでつかってみるのも良いですね。いい匂いがすると、なんとなくいい気持ちです。
ミノキシジルは一類医薬品です。販売者の説明が必要な製品なので、ドラッグストアなどで相談してください。価格も含め、納得して使ってみてください。
5 特別なシャンプーが必要?いえ、いつものものを使いましょう。
現時点ではがん治療での脱毛に対して、特別な素材がとくに良いという研究結果がありません。
ときには、変えたシャンプーがお肌に合わないというトラブルも予測されます。まずは、使い慣れたいつものシャンプーやボディソープ、石鹸を使うことを強くおすすめします。
患者さん向けの情報で、根拠があるように記載されている場合は、資料を作成しているところにその科学的な根拠の有無を確認してみましょう。また、髪が抜けていくときの髪の毛の痛みとシャンプー剤との関連も特に発見されていません。
6 もしも皮膚トラブルが出てきたら、使用をやめて、医師に相談してください
抗がん剤治療の間、みなさんの細胞サイクルの早いところに影響が出ています。
特に、毛根、お肌、粘膜は影響のでやすいところです。あれ?と思うことがあれば、その時使っているケア用品の使用をやめて、医師・薬剤師・看護師など普段受診しているところに連絡してください。
治療が落ち着いて病院に行く機会の減っている方は、行きやすい皮膚科を受診してください。そのときに、治療を受けていたことをお伝え下さい。
病院のがん相談支援センターでも、相談できます
ここでの相談は、治療が終わってからでも大丈夫です。
自分の通う病院の看護師さんに聞いてみてください。また、全国にあるがん相談支援センターは、そこに通院していない方でも相談ができる場所です。
参考文献
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