がん治療をしている患者さんの中には、仕事や普段のやることをお休みしていることに罪悪感を感じる人がいます。この気持ちについて、先輩患者さんたちとの対話から、私なりのアドバイスをお伝えします。結論は「自信を持って休んで。いまは、それが仕事。」です。大丈夫です。あなたのことをみんなが待っていますよ。

がんは病気。病気は、誰のせいでもありません。

みんなが働いているのに、私がいない分を誰かがやってくれていて申し訳ない、こんな気持を感じる方がいます。いえいえ、大丈夫です。休んで良いのです。病気はみんなに平等にやってきます。嫌ですが、本当です。昔は悪いことをした罰として病気になると信じられていた時代がありましたが、そんな迷信はもう誰も信じていません。あなたががんになったことは罰でもないし、あなたが何かをしたからがんになったわけではありません。しつこいですが、あなたのせいではありません。

現在、がんは年間100万人の日本人が体験する病気です。人口で考えると1%未満です。少ないですが、確実に毎年同じくらいの割合の人たちががんになります。そこに当てはまるか否かは、なにか理由があることではありません。だから、自分を責めるのはやめましょう。まず、誰も悪くないし、ましてやあなたは悪くないのです。

自分のせいじゃない、でも自分の身体のジレンマ。

私は悪くないのに、なんでこんな目に合わなきゃいけないの!とお怒りの気持ち、よくわかります。ほとんどの方は、どうして私が?と思っています。だって、悪くないのに、健康も気遣っていたのに、検診も受けていたのに。がん患者さんとお話をしていると、この気持ちの行き場のなさを痛感します。病気は本当に嫌です。しかも、がん治療は生活に影響の大きな治療が多く、自分の毎日が変わってしまうこともあります。

でも、自分の身体なんですよね。がんが発生したのは、自分の身体で、自分の中にある。誰のせいでもないけれど、自分の体の中にある。誰も変わってくれない。理由は自分にないのに、自分に発生した嫌なこと。がんはこんな嫌な体験です。

嫌な体験をするあなたを、みんなが支えます。

がん治療で仕事や役割をお休みするときに、周りにすみませんとかお願いしますなどとお伝えしたと思います。それを受けて周りの人たちは、決して怒ったり嫌な顔はしなかったと思います。(もしされたならば、それは組織内のがんと就労の支援を考え直してもらいたいです。)誰かが1人休むと、それをチームがどうカバーするのか。それが見えてしまう人は、お願いすることが心苦しいし、辛いと思います。でも、それをお願いしたとしても、あなたの人的な評価は下がらないです。だって、しょうがないことです。ひょっとしたら、働く部署は変わるかもしれませんが、あなた個人のパーソナリティ(人格)の評価は、きっと変わらないでしょう。だって、だれでもがんになる可能性はあるし、他の病気や不自由が生じることもあります。お互い様ですね。

多くの人が感じる「罪悪感」の中身

申し訳ないな、という気持ちが発生している背景にあるものを5つ上げてみました。もし皆さんがこんな気持を感じていたら、それは「心配無用」とお伝えしたいです。

  1. 仕事への負担感: がん患者は、治療や休養のために仕事を休むことで、同僚やチームに負担をかけていると感じることがあります。自分が他の人をフォローしたことがある人は、これを強く感じます。それでも治療で必要ならば休んだり仕事を減らしてください。あなたの毎日が続くことが、何よりも大事です。
  2. 家族や友人への影響への心配: がん患者は、自分の病気が家族や友人に迷惑をかけるとか、心配や罪悪感を感じることがあります。特に、家庭の経済的な負担や、他の家族が患者をサポートする必要があると、申し訳ない気持ちは大きくなります。あなたのことを大切に思う人達は、役に立ちたいと思っているから大丈夫。
  3. 自己価値感の低下: 仕事や社会的な活動が制限され、自己価値感が低下することがあります。これが罪悪感を生む原因となります。こんな自分が休むから、休むと迷惑をかけるから、自分はだめな人間だ、と自分の価値が亡くなっていくように感じます。そんなことはないですよ!
  4. 他者との比較: 治療のために休業することで、他の人と比較して自分が不足していると感じ、罪悪感が生じることがあります。自分が休んでいる間に他の人が進んでいく感じ、自分だけ取り残されたり、頭がぼんやりとして業務に戻れないのではないかという気持ちを感じるようです。それは全部お休みのせいです。大丈夫、ゆっくり戻って下さい。仕事に戻った先輩たちも、数ヶ月でちゃんとしゃきっともどります。
  5. 依存感: 他人のサポートや医療スタッフの依存度が高まり、自立心を感じにくくなることが罪悪感を生むことがあります。心身が弱ると、自分で決めたり頑張ったりすることが難しくなることがあります。それで当たりまえです。体調がもどってくれば、前の気持ちが戻ってきますから、焦らずいきましょう。

なんとなく元気がないときは、がんばらないことです。

人間の気力は、使いすぎるとすり減ってしまいます。心身が弱っているときは、同じことをするのにも気力をたくさん使っています。よいしょっと頑張っている状態が続くと、人は元気がすり減っていきます。治療中になんとなく元気がないときは、すり減っているのかもしれません。

気持ちに元気がないときは、全部一旦おいておいて、休んでみて下さい。眠れないとか、食欲が出ないとか、泣けてしょうがないときは、病院でカウンセリングを受けたり、お薬をもらうこともできます。これは、緩和ケアと呼ばれて、すべてのがん患者さんが保険診療で受けることができる治療の一環です。

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