乳がん、子宮がん、卵巣がんの手術後に出ることのあるリンパ浮腫。なんとなく重だるいけど、どのくらい心配したらいいの、放っといていいのか、注意するサインって何ですか?という質問を頂きました。この質問には、リンパ浮腫のケアに取り組む看護師さんにお話を聞きました。

emaさんは看護師であり、マニュアルリンパドレナージセラピストです。
セラピストになったきっかけはemaさん自身ががんサバイバーであり、リンパ浮腫患者になったことです

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ドレナージってなんですか?

リンパ液の流れが悪くなって浮腫んでいるところのリンパ液を流すことです。リンパドレナージには、一般的なリラックスを目的にしたリラクゼーションと、治療目的のリンパドレナージがあります。

とてもスッキリするけど、効果は限定的。

ドレナージを受けられた患者さまはとてもすっきりしたと喜ばれます。しかし、このドレナージの効果は残念ながら長くは続きません。また、患者さまも毎日ドレナージに通われるわけではありません。

ドレナージだけでなく、セルフケアも大切。

私は患者さまにはリンパ浮腫ケアは点ではなく線で行うことが大切だとお伝えします。クリニックでドレナージを受けることはケアの中では点でしかなく、その点と点を結ぶ線を書くことは患者さまにしか出来ないからです。そして、その線がなければセラピストがどんなに頑張っても維持・改善は難しくなってしまいます。維持・改善のためにはやはりセルフケアは欠かせないのです。

大切なセルフケアを続けるコツ。定期的にドレナージなどのサポートを受けてセルフケアを続けるモチベーションを保とう

セルフケアは地味で面倒くさいことも多く、モチベーションを落とさずに継続していくことはなかなか困難です。小さなことでも、続いたら素晴らしいことです。例えば、体重がなかなか落ちないとおっしゃる方には増やさなかったことは素晴らしいことです。そのことが少しでも患者さまのモチベーションにつながることを祈っています。

毎日のセルフケアを続けて、浮腫が改善してきたことを患者さまご自身が気が付くことで行動が変わってくることが多いです。また、その後で浮腫が悪化することがあっても、良くなったという事実が過去にあることで患者さまも頑張ってケアをすればまた元に戻せると希望を持つことができるように思います。

浮腫の判断がよくわからないという質問ですが、なにかコツはありますか?

よく説明される方法は、 サイズを測る、押す、下着などのゴムの跡が凹む、などがあります。

左右の同じところをつまんでみると、差がわかりますよ。

つまむ、という方法もあります。浮腫があると皮膚をつまんだ時に厚みがあり皮膚だけをつまむことができなくなります。
上肢にしろ下肢にしろ、左右差が出てくるので両方の同じところをつまむのがコツです。

リンパ浮腫外来に相談しよう

リンパ浮腫は治らないのか、今より細くなるのか、弾性着衣は一生履き続けなくてはならないのか、という質問が多いです。

現在は乳がんや婦人科系がんの手術ができる病院の多くはリンパ浮腫外来があります。ご自身が手術を受けた病院にリンパ浮腫外来があれば、まずはそこでご相談なさるといいと思います。手術を受けた病院にはそれまでの経過が記録として残っているので相談までのステップが少なくてすむと思います。

リンパ浮腫は、10年後くらいに出てくることもありますよね。そんな時は、まず手術を受けた病院に相談することですね。もしそこに行きにくいようなら、がん相談支援センターに相談してみてください。
がん相談支援センター 全国にある一番身近な院内相談室

リンパ浮腫が気になる方へ、emaさんからのメッセージ

リンパ浮腫について知りたいと思われる患者さんは、ほとんどががんの経験者です。がんという告知を受け手術や化学療法、放射線治療など大変なご苦労をなさっています。

私個人としては、そういった時間を経て今がある患者さんをいたずらに怖がらせることはしたくありません。かと言ってどのような行動がリンパ浮腫を発症するリスクがあるかを知らないこともまた望ましくありません。

残念ながら、現時点ではこれをすれば絶対にリンパ浮腫にならないという予防法はありません。健康に気をつけてお酒もタバコもせず、バランスのいい食事や運動を心がけていてもがんになる方もいれば、どんなに不摂生な生活をしていてもがんにならない方もいます。

リンパ浮腫もどんなに気をつけていても発症する方もいれば、リスクの高い生活をしていてもリンパ浮腫を発症しない方もいます。

私が大切だと思うことは、患者さんがこれからどのように生きていきたいと考えていらっしゃるかということです。リンパ浮腫の発症を恐れてリスクがあることは避けて生活していくのか、せっかく助かった命なのだからリンパ浮腫の発症のリスクを踏まえた上でやりたいことをやっていくのか。

例えば海外旅行が趣味の方に、長時間のフライトはリンパ浮腫を悪化させるリスクがありますと伝えるとします。それで患者さまは趣味を諦めてしまうかもしれません。それでも海外旅行に行き続ける患者さまもいるかもしれません。どちらが患者さまにとっていい選択なのか、それは患者さま自身がお決めになることですので、どちらを選ばれてもその患者さまがその方らしく生きていくためのサポートしていくことが私の仕事だと考えております。

正しい情報を知りながら、未来を考えられるのが良いところだと思いました。自分の状態にあわせて直接お話をしたり、ケアを学べるのは、病院、クリニック、専門セラピストさんたちならではですね。


emaさん、ありがとうございました。

リンパ浮腫とその治療についての情報は、こちらのページをご覧ください。

https://ganjoho.jp/public/support/condition/lymphedema/ld01.html

https://jbcs.xsrv.jp/guidline/p2019/guidline/g4/q25/

http://www.jsco-cpg.jp/guideline/31.html


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