こんにちは。時々聞かれる、若い世代の乳がん患者が増加しているんでしょう、というお話について解説します。結論は、明確な増減はないですよ、です。今日は日本乳がん学会のWEBサイトに公開されている、日本人乳がん患者さんの人数の変化について(疫学総論)のページを参考に解説します。若い女性たちを無駄に怖がらせることがないように、正しく知ってくださいね。

1985年、2000年、2015年、この3点で比較を見ると、明らかな増加は無いようです。

今回は、罹患率(りかんりつ)をつかいます。これは、人口におけるがん患者さんの割合を表すので、人口の変化の影響が少なく、正確に比較ができるからです。ですから、少子化や高齢化は関係ない数字を使っているんだな、と覚えておいて下さい。

このグラフは、1985年、2000年、2015年の乳がん患者さんの罹患率について、年齢別に表したグラフです。青で囲った部分が30〜39歳のがん患者さんの罹患率です。1985年〜2015年までをざっと見て、このグラフからは罹患率が上がっているとか、若い女性ががんになりやすくなっているとは言えなそうです。

このように、日本のがん患者数を追跡して調べた調査によると、15歳から39歳までの若い世代における乳がんの罹患率に大きな変化は見られませんでした。長期間にわたるデータを分析した結果、この年齢層における乳がんの発症率は相対的に安定しており、急激な増加はないようです。

増えたように見えるのは、メディア露出が増えたからではないでしょうか

このように、実際には増えていないのに、なぜ増えたように見えるのでしょうか。これは私の考えですが、メディアの露出が増えたり、SNSなどで自分の闘病体験を発信する患者さんが増えてきたことが、大きな理由の一つではないでしょうか。自分とは違うことや知らないことも、目にすることが増えると、増えたように感じますし、当たり前のように感じます。

そして、がんや病気のことは、引き続きナイーブな話でもあります。

目にしたり、興味を持つ人が増えることは、社会全体で考えると良いことです。なぜなら、毎年100万人のがんと診断される人たちがいて、その人達は社会の様々なところで毎日を暮らしているからです。がんになるのは特別な人ではありませんから、自分の周りの人ががんになっても驚いたり対応に困る時代ではなくなってきました。

ただ、そのせいで事実とは異なることが広まっているのも事実です。

  • がんになったのは生活習慣が悪いから
  • がんの家系
  • 〇〇を食べるとがんになる

これらは、つい気軽に言いがちですが、確証はありません。たしかにがんの発症に食生活の影響はあるとわかっています。しかし、絶対的にこれでがんになるわけではありません。家系もそうです。遺伝の問題は大変ナイーブな話で、病院での遺伝子検査では、専門の遺伝カウンセラーさんが誤解のないように正確に事実を伝えるサポートをしています。そのくらい、ナイーブな話です。

ですから、ちゃんと調べるか、うわさ話は自分のところで止めておいていただけるとありがたいです!頑張っているがん患者さんたちの日常生活が豊かになるように、そっと応援してください。

参考URL

乳房:[国立がん研究センター がん統計]

国立がん研究センターが運営する公式サイトです。

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