かたよらず、こだわらず、とらわれず。読みやすいエッセイで自分の気持ちに寄り添う本 超訳 般若心経

心がざわざわとする時に、あなたなら何をして過ごしますか。

この本は、乳がん経験者でもある著者、ひらたせつこさんのエッセイ本です。自分が乳がんになるなんて思わない頃に、お寺の住職さんたちにお話を聞きながらまとめた「般若心経」の本です。両側性乳がんを体験して、このときの言葉が心の支えになったというひらたさん。がんを経験した人が感じる心のざわつき。それを乗り越えたひらたさんの経験をご紹介します。

1 乳がんになってみて思い出した言葉たち

今年2021年発行の「超訳 般若心経」は、2014年発行「般若心経エッセイ」を文庫化したものです。書いてから7〜8年もたっているので書いた本人も内容を忘れていました。そしてすっかり忘れている間に私は両側乳がんになり、手術と抗がん剤治療をして、最後の抗がん剤治療からやっと1年と少し経ったところです。

すっかり忘れていましたが、改めて考えてみると、取材時に住職方からさまざまなお話をお聴きし、自分なりに言語化したことが、がんになった時の支えのようなものになっていたのではと思います。

2 般若心経のことばから、イメージを膨らませる

この本はたった260余字の般若心経を単語で区切り、その言葉からイメージされる短文をつけた本です。般若心経を単語で切るとよくわかりますが、とにかく「不」とか「無」とかの文字が多い。そして、わかりにくい。「色不異空、空不異色、色即是空、空即是色」 “色は空とは異なり、空は色とは異なり、色はすなわち空であり、空はすなわち色である”、なんのこっちゃって感じですよね。そのわかりにくいものを、私が勝手にイメージしながら文章をつけたのがこの本です。

難しくてわからない。だからこそ、かえって解釈自由、イメージが広がるというものです。きっと人生もそういうものなんだと思います。

わからないから、迷いながら、悩みながら、楽しみながら一歩進もうとする。

3 かみさま、と心でつぶやいた

私ががんだと告知を受けた時。それは、自分で気づいて乳腺クリニックに検査に行った当日でした。

「先生、どれくらいの確率でがんだと思いますか?」

「・・・9割乳がんだと思います」

もちろん2週間後に正式な告知を受けるわけですが、専門家が「9割」なんて、実質あれはがん告知ですね。わたしは、心の中でこうつぶやいた自分に気づきました。

「かみさま・・・」

(仏様じゃないのかって?実はこんな本を書いていても特定の神や仏は信じておらず、人智を超えたなにかを「かみさま」と呼んでいます)

「かみさま、そうきたか」

自分の人生にこんなことが待っているとは、今のいままで知らなかった。でも、こういう人生が用意されていたんだなぁ、と思ったのです。

4 すべてが移ろい、流れていくという世界観

私はきっと大きなできごとが降りかかってきた時、まずはがっちり受け止めすぎずに(そんながっちり受け止める勇気がないから)、受けながしながら進んでいる気がします。かみさまが投げてきたストライクボールをバッターボックスで一度見逃す感じ。「ほぉ、こういう球を投げるのね」。本気のバットを振るのは、もうちょっと落ち着いてから。

正直言って、いまだに自分ががんになった人生を歩かされている理由はわかりませんが、それを探し続けていくのもこれからの人生の楽しみのひとつかもしれません。そう、般若心経に書かれていることはよく理解できないが、それをわかろうとしながら修行する。人生に起きているすべてのことがそういうものなのかもしれません。

ただ救いなのは、仏陀はさまざまな苦行を行った上で、苦行では悟りは得られない、と言っていることです。仏教というと厳しい修行を思い浮かべる人が多いでしょうが、実は仏陀自身は「中庸」が大切と言っているのです。

かたよらず、こだわらず、とらわれず。般若心経は、生きていることで絶対というものはなくすべてが移ろい、流れていくという世界観です。起きてしまったことを変えることはできなくても、それに対する反応は自分自身で選びながら、日々生きていくことができるのです。

5 患者モードの自分に付き合ってくれた本たち

・・・この文章は本の紹介になっているでしょうか。不安です。

私は検査や化学療法で通院している時、病院の待合室でよく本を読みました。気持ちが患者モードになっているのでエンタメ系の本はダメで、人生や身体や心のことを扱った本を読みました。最初は受け流したことが、少しずつ現実になって日常を変えていく、そんなそこはかとない不安につきあってくれるような本がよかったです。でも抗がん剤投与しているとすぐに眠くなって、意外に本が進まない。この本は見開きごとの短文ですから、好きなところからお読みください。嫌いなところは飛ばしてください。

同じ時に文庫化された「超訳 禅の言葉」もあります。

どちらもイラストがとてもすてきなので、ぜひイラストも楽しんでください。

 


 


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