家族ががんと言われたら、本人はもちろん家族も驚いたり落ち込んだり、動揺します。そんな動揺の中でも患者さん本人をサポートしていくために、まず知っておいてほしい基本情報と、私が実際に患者さんのご家族にお話する際にお伝えしているまとめました。

患者さんの気持ちを聴く、情報を集める、自分のケアも忘れずに。

がんになって一番つらいのは本人です。自分の中に発生したもので、誰のせいでもなく、ましてや原因もよくわからなくて、とにかくここにある。怒りの行き場もないし、でも周りに当たり散らせばよいものでもないとわかっています。

そんな中で、家族が大事にしてほしいことを3つにまとめてみました。

  1. 患者さんの感情を尊重する、聴く:
    • 家族はがん患者の感情を尊重し、患者が抱える感情に理解を示し、聞き手になりましょう。アドバイスではなく、本人が気持ちを吐き出しながら受け止めていく過程を一緒に過ごしてください。
  2. 情報の収集と共有:
    • 患者さんが知っていることを、同じくらいに理解してください。そうすることで、患者さんは病気や副作用についての細かい説明せずに自分のこと話し始めることができます。話すこともエネルギーが要りますので、話しやすいように聞き手の家族も可能な範囲で理解してみてください。
    • もし家族から提案する場合は、正確な情報を収集してください。困っている時に「効果がある」「寿命が伸びる」「治療がいらなくなった」など、一気に今を改善するような広告は、つい飛びつきたくなります。しかし、いまはがんの治療を病院の医療チームと一緒に組み立てて実行している段階です。補完代替療法や民間療法、いい食事など、色んな情報があると思いますが、本人に話す前に専門家に相談してみて下さい。
  3. 家族自身のケアも忘れずに:
    • 家族も自分自身のケアを怠らないようにしましょう。病気の家族がいて、その人をサポートしていくというのは、なってみないとわからない大変さがあります。ですから、自分自身の時間も大切にしながら、家族自身の体力やメンタルヘルスに注意を払うことが必要です。自分のために、少し離れてリラックスする時間や楽しむ時間を作って下さい。あなたが元気で前向きでこそ、安定したサポートができます。

具体的な方法。患者さんの今のこと、本人の気持ち、治療への気持ちを正しく知ろう

家族といっても、本当に病気と人生についてどうしたいのかを、面と向かってしっかり話し合ったことのある人は少ないのではないでしょうか。家族と患者さんが理解を揃えるために、効果的なコミュニケーションの取り方のコツをご紹介します。

大事なことは、情報や感情を隠さず、素直に相手とコミュニケーションを取ることです。

  1. 感情を共有する:感情を隠さずに話し合い、お互いの気持ちを伝えること。
  2. 定期的な対話を持つ:定期的に話す。患者と家族が気持ちを交換できる環境を整えます。
  3. 医療情報を共有する:治療や病状に関する情報を家族と共有し、お互いが現状を理解できるようにします。
  4. 意思決定に参加する:可能であれば、医師との話し合いに参加して、治療の内容の理解を深めて、本人が言いたいことが言えるようにサポートして下さい。
  5. 適切なタイミングで話す:家族は患者さんの気分や状態を考慮し、適切なタイミングで話すことが大切です。特に、がんと診断されてから1ヶ月位の間は、ほぼすべての人が抑うつ状態にあるという研究があります。重要な決断は、急がず、タイミングを見計らいましょう。
  6. 専門家のサポートを受ける:必要に応じて、専門家やカウンセラーのサポートを受けることで、コミュニケーションを効果的に行います。がん相談支援センターは家族も使うことができますので、話を聞いてもらいましょう。

患者さんの感情が不安定な時の寄り添い方

本人が泣いてばかりいる、死にたいと言う、こんな時の寄り添い方は難しいものです。正解はありませんが、感情を落ち着けるのに役立つ方法がありますのでご紹介します。

  1. 聴く:まず最初に、家族の感情や思いを聞いてあげましょう。感情を表現し、愚痴や不安を聴くことが、感情の解放として重要です。
  2. 共感する:家族の感情に共感しましょう。「あなたの気持ちがわかるよ」「辛い時期だね」といった言葉をかけ、感情を理解していることを示します。
  3. 寄り添う:家族の傍にいて、支えを提供しましょう。手を握ったり、抱きしめたり、タッチングは有効です。
  4. 語りかける:感情や不安を共有する場を提供しましょう。会話を通じて感情を整理し、家族が気持ちを吐き出す場を提供します。
  5. 助言はしない:家族が感情的な状態にあるときに、過度な助言や解決策を提供しないようにしましょう。ただ聴いて共感し、解決策を求められるまで待ちましょう。
  6. 時間をかける:感情の収束には時間がかかることがあります。焦らず、家族が自分のペースで感情を処理できるようサポートしましょう。
  7. 専門家のサポート:感情が長期間続く場合や、深刻な悩みがある場合、専門家(心理療法士、カウンセラー、精神保健専門家など)のサポートを受けることを検討しましょう。がん緩和ケアは、心の辛さも治療の対象です。
  8. 自己ケア:家族の感情をサポートする一方で、自身のケアも大切に。自分の時間をとり、休息やリラックスを大切にしましょう。
  9. 家族全員で話し合う:家族全員が関与している問題や状況について話し合いましょう。解決策を共有し、サポートし合うことが重要です。誰か1人が抱え込むことのないようにしましょう。
  10. 忍耐と理解:感情的な状況において、家族が怒りや悲しみを表現することもあります。その際に冷静さを保ち、理解と忍耐を示しましょう。
  11. 孤独感を減らす:相手が孤独感を感じている場合、一緒に時間を過ごすことや、社会的なつながりを強化することが役立つことがあります。
  12. 希望と支えの存在を強調する:あなたがいてくれることが嬉しい、存在が大切であること、そして家族や友人たちがサポートし続ける意志があることを強調しましょう。

最後に。家族のみなさんの休憩を忘れずに!

泣いたり落ち込んだりする家族と一緒にいることは、想像以上に負担が大きいものです。がん患者さんが辛い時期であり、一緒に乗り越えようとしている時期は、休んだり楽しんだりすることに罪悪感を感じることもあります。でも、あなた自身の人生の時間も大切にしてください。1人で美味しいものを食べたり、スーパー銭湯にいったり、友だちと遊んだり、エネルギーをチャージすることを忘れずに。自分を大切にしてくださいね。

参考URL

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